活動のゆがみ
営業部門では、その日の活動内容を日報などにしたため、上司に報告することになる。
本来であればその日報を、個別に確認し、アドバイスをするのが営業マネージャーの仕事のはずだ。
しかし最近はSFAによるデータ蓄積やメールでの確認が増え、そのマンツーマンでの指導が欠落しているようにも感じる。
紙媒体であれ、電子媒体であれこの日報も、同時刻に部下全員から上がってくるので、上司は個別でその詳しい内容を確認することができないことが理由でもあるのだろう。
そうなると、マネージャーは、会議ですべての状況を確認するしかない。会議の場でチーム全員の活動内容を確認・把握し、対策を講じることが、営業会議の目的となる。その会議では、営業として担っている各人の予算の進捗報告も必須となる。
例えば月の初めの営業会議では、次のような内容が話されることになる。
各人毎の前月の予算対実績の報告
チームとして前月の予算対実績の確認と反省
会社や組織としての今月の方針発表
各人毎に今月の予算対比見込状況の報告
チームとして今月の予算の再確認(個人ノルマの設定)
このような内容を個人毎に報告して、情報を共有し、チームとして予算をクリアするための会議のはずだ。
しかし毎月、約束通りにならない現実もそこには横たわっている。
そのことから、営業会議が嫌と言われる原因でもある。前月のノルマ達成できなかった翌月の会議は、マネージャーからの叱責があったりすることがある。そして、翌月の数字にその不足分を穴埋めしろとの指示が飛ぶこともある。すると営業マンは、返す言葉もなく、ただ「はい」と返事をする光景が繰り返される。
そうなると当該の営業マンは、かなりのプレッシャーを感じながら、当月の活動に当たる。よくあることとして、手元にある見込をすべて決めないと、その約束には届かなかったりする。
結果、手元にある見込締結のためにすべての計画が歪められる状況ができ上がる。
その見込の中の1社が、予定通りプレゼンテーションができず、ずれ込むと、そのアポイントを入れるためには、顧客から指定されそうな時間を確保する必要が生じる。
すると当初計画した他の予定までも排除して、そのプレゼンテーションのアポイントのために、時間を割くこともいとわない。
このように、狂いだした案件は、プレゼンテーション後に追加資料が必要となったり、オプションが追加されたり、その説明が必要となったりと次々にタスクが増えるものだ。しかしこの案件は決めなければならない。すると他の計画をかなぐり捨て、その案件獲得にまい進することが往々にして起こる。
このように狂いだした活動計画は、歯止めがきかずにガタガタに崩れる
営業マンは、こうした眼前に見えているタスクを実行する。そのタスクは、よくて月間計画から見えるタスクだ。
つまり、多くの営業マンが行っている仕事は、近視眼的なタスクを多少なりとも優先順位付けをして実行しているだけだ。これこそが、今をスタートラインにした積み上げ思考の賜物だ。
この思考で仕事をしている営業マンの共通点は、今月の成果とは、処理したタスクがどこまでたどり着いたかに過ぎない。表面的な気持ちは、予算を達成したいと思っているが、その結果はタスクの処理状況の結果でしかない。
つまり、結果をコントロールできない状態に陥っている。
こうした目の前に見えているタスクを優先順位化して、効率的に仕事をしようとしている。それも一つ一つの仕事に一生懸命に当たっている。しかし、各々のタスクは、一つ一つの積み上げだ。プレゼンテーションのアポイントを取り、企画書を作成し、プレゼンを行い、その結果に一喜一憂している。まさに積み木を積み上げているようだ。だから処理できた結果が、成果でしかない。
つまり積み上げ思考に基づいた活動とは、「今」にフォーカスして考えを始める思考法で次の行動を積み上げている。その今とは、目の前の仕事、抱えている問題などを今の視点で問題を一つ一つ解決している状態だ。
でもそれは仕方ないことなので、一生懸命に企画書を作り、プレゼンテーションに臨む。すると、内容の訂正を求められ、企画書と見積書の再提出を求められることもある。こうしてスケジュールがずれると、最終決裁がクライアントの月内の役員会に間に合わず、月内に受注できない。しかし、それがたどり着いたゴールだ。
つまり結果がどこまでたどり着くかは、自らでコントロール不能な状態になっている。だから、営業会議で『着地』という言葉が生まれる。営業会議で着地と言い出しているチームは、チームとして積み上げ思考で仕事をしている。
たどり着くべき結果の目標は100メートル先なのに、50メートル先にしか行けなかった。
それは、一生懸命に目の前にある積み木を一つ一つ積み上げたら50メートルまででしたという状態だ。
仕事とは、これでいいのだろうか。